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法律コラム

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2013.07.01  カテゴリ: 判例
土地区画整理事業の事業計画の決定の処分性

1  今回は,行政法の分野における,近時の重要判決の1つである,土地区画整理事業の事業計画の決定に処分性を認めた大法廷判決(最高裁判所平成20年9月10日大法廷判決・民集62巻8号2029頁,以下「平成20年判決」といいます。)を取り上げたいと思います。

  平成20年判決の事案ですが,浜松市の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定について,施行地区内の土地所有者が,同決定の違法を主張して,取消訴訟を提起したものです。施行地区内の土地所有者は,同決定により,相当長期間にわたって,建築制限等の不利益が課されます(土地区画整理法76条1項)。しかし,同決定の処分性が否定されれば,裁判所は事業計画自体の違法性を審理せず門前払いをしますので,同決定に処分性が認められるか否かは,施行地区内の土地所有者にとっては非常に重要な問題なのです。

 

2  周知のとおり,最高裁判所は,従来,長きにわたって,土地区画整理事業の事業計画の決定の処分性を否定してきました(最高裁判所昭和41年2月23日大法廷判決・民集20巻2号271頁,以下「昭和41年判決」といいます。)。

  昭和41年判決は,事業計画の決定を一般的・抽象的なものとし,「いわば当該土地区画整理事業の青写真たる性質を有するにすぎ」ないとした上で,建築制限等が課される点は決定の公告に伴う附随的効果にとどまり,また,救済手段は具体的な処分がなされた時点で認めれば足りるのであって,事業計画の決定・公告の段階では事件の成熟性がないとして,処分性を否定しました。この昭和41年判決は,当初から批判的論調が多かったものの,最高裁判所は,平成20年判決までの約42年間,昭和41年判決を踏襲し続けました(最高裁判所平成4年10月6日小法廷判決・判例タイムズ802号100頁等)。

 

3  平成20年判決は,以上のような昭和41年判決を42年ぶりに変更した画期的な大法廷判決です。

   平成20年判決は,施行地区内の土地所有者等は,事業計画の決定によって,各種の規制の伴う「土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ,その意味で,その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり,事業計画の決定に伴う法的効果が一般的,抽象的なものにすぎないということはできない。」とした上で,換地処分等の取消訴訟は,事情判決(行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性があり,権利救済として不十分であるから,「事業計画の適否が争われる場合,実効的な権利救済を図るためには,事業計画の決定がされた段階で,これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性があるというべきである。」として,処分性を肯定しました(15人の裁判官の全員一致です。)。

   平成20年判決は,施行区域内の土地所有者等が,従来よりも相当早期に裁判所に権利救済を求めることができるようになった点で,非常に大きな意義を有する判決です。

 

(弁護士 中山 健太郎)

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